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人工毛植毛
2016/04/14

他社の追随を許さない世界特許「α」型毛根の秘密

m.funaki
ニドーブログ

人工毛植毛のリーディングカンパニーであるN社(ニドー)の人工毛は、毛根に当たる部分が「α」型になっている。現物を手にとり、つぶさに見ると交差する点に結び目がない。自然にくっついている。電子的に熱を加え、一瞬のうちに融着させるのだという。なぜこんな形状なのか?

「植毛後の定着率をよくし、同時にいざというときに抜けるようにするためです」

開発者に訊くと、なんとも不思議なことをいった。

定着率をよくする、というのはわかる。でも抜けるようにする、というのがわからない。

わざわざ毛を植えるのだから抜けてはダメなのではないか?

それに定着率をよくするというのは抜けにくくするということのはずである。

なのに、同時に抜けるようにする、とは相反する特性を追及するということと同義で、矛盾ではないか?

「そうですね。でもその相反することを達成しなければ、人工毛植毛はどっち着かずの中途半端な製品になってしまいます。だから何としてもその両極の特性を兼ね備えた製品を作る必要があったのです」

開発者は、「α」の秘密を語り始めた。

植毛の定着率をよくするためには「毛」をそのまま植えたのでは、すぐに抜けてしまう。

根元に引っ掛かりがないからである。これは素人でもわかる。抜けにくくするには、毛根に当たる部分にひと工夫が必要だ。つまり引っ掛かりを作る必要がある。

どんな引っ掛かりを作ればよいのか。丸結びを作る。丸結びを二重にする。L字型にする。理論上はいろんな形が考えられる。

ある日、これは! と思うアイディアが浮かんだ。先端をヤジリ型にするのである。「↓」の形である。

さっそく試してみた。とはいっても他人を実験台にするわけにはいかないので、開発者自らの頭を使った。注射針に塩化ビニールの毛をつけて何本も植えた。浅くてはダメだから、1センチほど刺して深めに植えた。だが、数日するとことごとく抜けてしまった。

塩化ビニールの毛は人体にとっては異物である。体内に侵入してきた異物を排除しようと、まずリンパ球が襲いかかる。そして浸出液もろとも体外に排出してしまうのである。

毛根の形状を変えていろいろ試した。額は注射針の痕で傷だらけになったが、ここまでくれば技術者としての執念がある。その執念が通じたのか、ひとつだけ抜けにくい形がわかった。先端をボートのオールのように太くするのである。ただ平たく太くしてもダメで、円筒形を保ちつつ太くするのである。これを植えると、植えるときに先端が折れ曲がってL字型になる。太さと形状のふたつの引っ掛かりを作ったのである。

「それでも1ヶ月後の定着率は50%ほどでした。」

2分の1の定着率では製品としては不十分ながら、開発者の前頭部には人工毛が着実に増えていく。これが開発者の仲間内で話題を呼んだが、開発者は不満であった。

それからも試行錯誤が続き、たどり着いたのが「α」の形である。

実験の集積から、人工毛は簡単に抜けるのは論外であるが、反対に絶対に抜けないのもいけない、という結論を導き出していた。

なぜ抜けないのは失格なのか?

人の毛根部は表皮から雑菌が入って炎症を起こすことがある。ニキビが頭皮に起こるような感じで、ときに化膿する。経験した人もいるはずだ。

あれが人工毛を植えた後に起こらないとも限らない。

起こった場合、炎症のもととなっている毛を強制的に抜かなければならないが、「毛根」を太くして引っ掛かりを強烈にした人工毛だと、皮膚を破壊してしまう。皮膚を破壊すると傷痕が残って醜い。青春真っ盛りの少年のニキビ面が、ハゲ頭に起こってしまい悲惨な結果になってしまう。引き抜くときに、根元で切れてしまった場合、最悪である。炎症のもととなっている「毛根」が頭皮内に残ってしまい、切開手術をしなければならなくなる。「α」の形の必然性はそこから生まれた。

この形だと、輪が引っ掛かりとなり、定着率の向上に貢献するのは間違いない。実際は植毛時にいったんは押しつぶれ、植えた後に復元するのだという。

低い確率とはいえ、植えたあとに炎症がおこったとしても、強い力で引っ張れば輪がほどけて1本の毛となり、スルスルと抜けるのである。

「そのためには輪を結んで作ったのではダメなのですね。引っ掛かりが強すぎて、強制抜去の必要があるときにトラブルのもととなります。で、電子で融着させる方法にたどり着いたのです。これならほどよい強さとなり、植毛の定着率を上げつつ、同時に頭皮を傷つけずに引き抜くこともできる。この一見反する特性を同時に持つ人工毛を開発したからこそ、製品化の道が開けたのです」

開発者は、ここぞとばかりに勢い込んで話した。

自然な頭髪は人にもよるが50~80gの力で抜ける。「α」の形をした毛根を持つ人工毛はすべて150gの力で抜けるように作られている。

人の頭髪より抜けにくいが、いざというときは抜ける…という意味はそういうことなのである。人工毛の中には結び目を毛根として抜けにくくする方式のものがあるが、そこが「α」型を持つ人工毛とは、決定的に違う点だ。

 

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参考書籍

「床屋も間違える驚異の毛髪術」 著者:黒木 要